特定社会保険労務士とは (略:特定社労士)


 労働に関する紛争解決を専門家に依頼するとなると弁護士がまず挙げられますが、社労士も受任できるようになりました。受任できる社労士を特定社労士とし、従来の社労士と区別しています。

 ただし、特定社労士の業務=弁護士業務ではありません。

 まず、特定社労士の業務は「紛争解決手続代理業務」といい、社労士法第2条第3項に規定されています。その内容を簡単に書きますと次のようになります。


〇労働局(労働委員会、社労士会)でのあっせん手続き、その相談業務、あっせん手続き後の和解交渉、あっせんの場での契約作成とその締結。均等法等の調停における同業務。


 大きく見ますと、特定社労士の業務は個別労働紛争解決促進法を根拠にします。

 したがって、以下の3点を基本とします。

1、会社と労働者個人との紛争に限定。

2、労働局等の紛争調整機関(あっせん機関)での解決を前提。

3、終局点は和解決着。


 弁護士のような代理人として活動する部分は限定的ですが、紛争に関わる業務を行うため、依頼者の利益を損なう双方代理等は禁止されています。したがって、例えば、代理人の関与先事業所が、依頼者の相手方である場合は、代理業務は禁止されます。(社労士の場合、両当事者の承認を得て解決する役割が望まれる可能性が高い。)

 実務的には、社労士業務である労務管理や、労働社会保険諸法令の内容を含んでいる紛争が多いため、社労士業務も踏まえたスタンスでも対応していきます。

※弁護士法の規定をもとに特定社労士の代理規定が作られておりますが、訴訟形式での代理人でないこと、事務手続きを進めることで結果として紛争状態が解消する事案や事務手続きを求める事案もあることから、訴訟代理とは違う代理特性があります。



※裁判とあっせん

・民事裁判は、私人間の法律的紛争について、紛争当事者を関与させて、国家機関としての裁判所が強制的に解決する手続きをいいます。あっせんは私人間の当事者(雇用契約関係にある当事者)を関与させて、その労働契約関係に関する紛争について、非強制的に、その紛争解決を促進する手続きです。

・裁判が進むと和解勧告がよく行われています。その段階に、ちょうどあっせん(紛争調整手続き)が当たるものだと考えることができます。

・裁判は法律的紛争を扱うもので、法規定に反したか反していないかが審議の対象となります。あっせんは終局点を和解締結とし、法規定を基準に据えるものではありませんので、当事者ごとに、事案ごとに態様が異なってきます。